ドーキンスがこの本を書いた背景には、進化論を信じていないアメリカ人が多いことがある。これはよく知られた話で、たとえば去年発表された調査では60%のアメリカ人が進化論を信じていない。世界は神が作りたもうたまま今の姿があるという、ブッシュのようなキリスト教原理主義者がうじゃうじゃいるわけだ。こうした宗教指導者たちは進化論への攻撃を強めており、公教育で進化論を教えないよう法律を変えたり、児童生徒を組織して進化論を教える教師を吊し上げるよう仕向けている。
こうした宗教的・非科学的非寛容さを徹底して攻撃するドーキンスには本当に頭が下がる。既に世界最高レベルの科学者の地位をほしいままにしているのだから、他の科学者のように「あほの戯言」と無視して安穏と研究生活に没頭することもまったく可能なのに。目の前にある科学的危機を放ってはおけないんだろうな(日本ではなぜか竹内久美子さんとかいうトンデモ本作者が解説本書いたりしている不思議なことになってますが。本人知ったら怒るだろうな)。
それにしても超大国の知的劣化は目を覆うばかりで、医療制度改革への攻撃もそう。「税金を使うな!」「自由を奪うな!」とか言って保険業界の口車に乗せられ踊らされているアメリカの人たちを見るたびに、TVからしか情報を得なくなった人々の末路は恐ろしいとつくづく思う。
さて、アメリカ人の6割が進化論を信じていないのはドーキンスさんにまかせるとして、翻って日本はどうか。
同じデータを見ると、8割の人たちが進化論を信じている。「さすが日本」…なのだろうか。
残りの2割って、進化論を疑ってるの?それってかなり衝撃的な数字じゃないでしょうか。
そりゃアメリカと比べればまともな数字だろうけど、2割だよ。5人に1人が進化論懐疑派だって、これはかなり多く感じるのは私だけでしょうか。
気になるのは、日本の場合、この2割の人たちはどういう主張を持っているのかってこと。アメリカの場合はキリスト教原理主義、イスラムならイスラム教原理主義と、世界各地では宗教と密接にかかわっているわけでありますが、日本の場合はどうなのか。イザナギノミコトとか神話を真剣に信じている人が5人に1人もいるとは思えないしなあ。だいたい神話を詳しく知ってる人がそもそも5人に1人もいないだろうし。
期待を込めて考えれば、「進化論も悪くない考えだけど、もっと正鵠を得た進化の過程が今後解明されるのではないか」という慎重な思想が多いのではとも思える。これなら何も心配はいらないのだけれど。
一番心配なのは、ほら、アレですよ。
「進化論?猿からヒトになっただあ?」
「そんな自虐史観を信じているから日本はダメになったんだ!」
ま、まさか。これじゃないよね。
ラベル:ドーキンス