2009年11月02日

売り上げに影響するのだろうか

中島みゆきさんが紫綬褒章って、驚きました。
ファンとしてはめでたいことなんだけど、「おいおいもうそんな歳?」って感じです。
そう思って受章者一覧見ると意外と四〇代なんかもいて、今時の褒章は=年寄りというわけでもないようであります。
それにしてもなあ。なんだかイメージが湧かない。本人は相変わらず人を食ったようなコメントを出してますが、ご自分でも面食らってるのではないかしら。

久石譲の方はまだなんとなくわかる気がする。するけれど、こちらの方も意外といえば意外。私、ピアノのレパートリーの三分の一は久石譲っていうくらい好きだし、高く評価されていい人だとは思うんだけど、そんなに活躍の幅が広いとは言えない気もする。基本的に宮崎駿と北野武だもんね。
久石譲が授章するなら加古隆とかだって……と思うのは私だけではないはず。

ま、褒章叙勲の基準なんてあってないようなものとは昔から言われてることなので、今更考えても仕方ないし、ファンとしては素直に喜ぶべきなんでしょうな。

そう言えば、さ来週、中島みゆきのニューアルバムの発売なんだけど、まさかプロモーションの一環じゃ、なんてね。

「褒章受章第一弾アルバム!」なんて帯が付かないかな。
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2009年01月17日

パッションがあれば懐メロにならない

山下達郎のコンサートに行ってきました。
いつもなら若干詳しくリポートを書くところ。ましてや6年ぶりの全国ツアーとくればなおのことなんですが、ライブの終盤、達カさんが「ツアーが終わる4月まで、ネットなどでのネタばらしは控えてください」という呼び掛けがあり、セットリスト含めてきょうの時点では書かないことにします。

ですが素晴らしいパフォーマンスであり、山下達郎はおそらく現在最高のポップミュージシャンであることをあらためて印象付けたことは間違いないライブでした。
とにかく鳥肌が立ちっぱなしの全体を貫くグルーブ感が素晴らしい。
今回のツアーからドラムが小笠原拓海に代わり、ファンの注目もそこに集まったと思うんだけれど、これが素晴らしい。まだ24歳。アラウンド50のメンバーの中ではやたら目立つけど(達カさん曰く「ウチの娘と同じ年」)、「これからの日本の音楽シーンを背負って立つ」という達カさんの紹介に嘘はない逸材。

達カさんのMCは、綾小路きみまろのマネまで飛び出すサービスぶりだったけど、硬派なスタイルは健在。
「RIDE ON TIME」から28年、「クリスマス・イブ」から25年が経ったことを紹介し、「もう懐メロだよね」と嘆いてみせる。
「こういう懐メロにすがってディナーショウでもやってれば楽だよね」。

ここで達カさん、猫背気味の背中をぐいと伸ばし、客席を見据えた。
「でもね、ロックンロールはパッションだ。パッションがあれば懐メロにはならないんだ」
「いつまで声が出るのか神のみぞ知るけれど、これからもロックンロールのパッションを持ち続ける」
思わず熱い拍手を送り続けてしまった。

山下達郎56歳。
僕はどこまでパッションを持ち続けていられるのだろう。
「懐メロ」な人生に用はない。



ラベル:山下達郎
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2008年10月19日

風の日には歌を聴け

最近、ELLEGARDENのベスト盤をしつこく聞いている。
ベスト盤と言っても、休止宣言以降にリリースされた事実上の「総決算」アルバムなわけだが、それにしてももう新曲が聴けそうにないのが残念だ。
最近これほどクールで骨太でカッコよくで思いっきりロックなバンドはなかったと思う。ロックってのは技術ではないという使い古された言葉がぴったりくるバンドだったなあ。
もちろん決して技術が低い訳じゃなくむしろ相当に高度だけれど、今時信じられないくらいシンプルで音に飾り気がない。
ゴテゴテにデコレートされたJ-popやらJ-rockやらがひしめく中で、ELLEGARDENの疾走感は尋常じゃなかった。

このベスト盤は未収録曲などは入っていなくて買わなきゃ買わないで全く何の問題もないのだが(このすっきりとした商売気のなさ、割り切りの良さもELLEGARDENらしい)、彼らのより抜きの曲をまとめてこういう形で聞くとたまらないね。全力疾走でフルマラソンを駆け抜けるって感じ。
ほぼ制作順・発表順に収録されているので成長の軌跡もよくわかる。しかし初期の頃からその疾走感はほぼ完成されていたようだ。

この夏、彼らの休止宣言を伝える記事には「メンバーの間にモチベーションの差が生じた」とあったけれど、おそらく真実なんだと思う。あの疾走感、あのグルーブ感はひたすら「ロックが好き」というモチベーションからでしか生まれてこないだろうし、それが失われてしまえばもう飛ぶことはできないだろう。
風の日が来るのを静かに待ちたい。


雨の日には濡れて 晴れた日には乾いて
寒い日には震えてるのは当たり前だろ
次の日には忘れて 風の日には飛ぼうとしてみる
そんなもんさ
         ──ELLEGARDEN「風の日」
ラベル:ELLEGARDEN
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2008年10月08日

ブルースナイト

不思議なものでブログというものは、意外と書きたいことを書いてなかったりする。
よくこのブログで備忘録代わりに(というかブログというのは備忘録なんだろうな)ライブの感想などを書いているけれど、岡部鉄心バンドのことを今まで一度も書いてなかったことに気づいてしまった。
岡部鉄心さんというのは知る人ぞ知る博多のブルースマンで、ドラえもんの映画「のび太の宇宙小戦争」に出てくるパルチザンの自由同盟盟主のゲンブ氏そっくりのコワモテなんですが(って、誰もわかんない比喩だけどさ)、いったんギター持って唄い始めるともうこんなにサイコーなブルースマンはいないという方であります。
博多弁で語る「ラーメン屋の姉ちゃんの歌」は落涙必至。涙がしたたり落ちたバーカウンターにはもちろんバーボンのショットグラス。

ただ、ブルースライブ自体は珍しくも何ともないのでありますが、すでに10月6日で3回目を数える「岡部鉄心バンドブルースナイト」はなんと街場のバーで開かれているのであります。
ライブハウスではありません。フツーのバーです。それもカウンターオンリーの。

「そんなもん、できるわけないだろう。ボックス席もないならタダの流しのギターとどこが違うねん」と関西弁でつっこんだあなた、正解。
ドアとカウンターの間で鉄心さん、唄います。その横のスペースにドラムセット(おい)。さらに横にベース。簡単に言えばカウンターのお客さんの背後霊状態。
初めてバンド編成になった第2回目の時、私ドラムセットの隣でした。ライブハウス経験長いですが、バスドラの前で酒飲んだの初めてです。
ギターアンプはカウンターの上。アンプの前にはバーボングラス。

もう最高です。トーキングブルースって究極はこういうスタイルに行き着くんじゃないのかな。
トーキングブルースが自らの音楽の理想だと公言するガリレオ・福山雅治君がこれみたら長崎に帰省せずに熊本に来るぞ。
もうこれは必ず絶対に何が何でも続けて行っていただきたいと、これを呼んでいるであろう店のマスターにここで強く主張しておくわけであります。

と、それはおいといて。
このトーキングブルースナイトの第二回目から「ET」という女性ブルースシンガーが前座で登場するようになりました。
身長も手のひらもみんな小柄で、ギターがやたら大きく見える「女の子」です。
でも、ハンチングにちょっと大きめのシャツ姿できっちりブルースです。「天空の城ラピュタ」みたいと言えないこともありませんが。

これがいい。
まずギターがちゃんとしてる。若いブルースマンって、結構奏法なんかいい加減で「まず気合いから」みたいなところがあるんですが、彼女はちゃんとしてる。少なくともきちんと気を配って演奏してる。
唄も同じ。ブルースらしく自分に没入してるところとはちゃんとありつつ、どこか客観的に見ている。客観的になりすぎるとまたこれはブルースじゃなくなるんですが、そのバランスがいい。おそらく意識してるんじゃないけれども、聞いている客としては大変心地よい。
それはオリジナルの曲によく出てる。
何の派手さもないけど、「ブルースってこうだったよなあ」ってこんな子に教えられるのかという思い。
ブルースっていうのは本当は「含羞」を聞かせるものだったということを思い出させてくれる唄です。
特に「ゆっくり廻る」「街」の2曲は素晴らしい。

鉄心さん、彼女はそのうち大化けするんじゃないでしょうか?

彼女のhpは(携帯向けみたいだけど)http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=etinfo
オススメです。
ラベル:岡部鉄心 ET
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2008年05月12日

スティーブ・ガッド!

たとえあなたが「スティーブ・ガッド」というドラマーを知らなくても、その「音」は耳にしたことがあるはず。
クラプトン、チック・コリア、ジェームス・ブラウン、P・マッカートニー、競演したミュージシャンを上げていけばきりがないんだけど、日本で最も有名なガッドのドラムソロといえば、これでしょう。
「恋人と別れる50の方法」サイモン&ガーファンクル。
ポール・サイモンがガッドに依頼したと言われるこのドラムソロ、一度聞いたら忘れることができません。Aメロの演奏はドラムのみという冒険が、結果的に少しも冒険になってない。いかにもガッドらしい(というかこの後本格化するガッドらしい)、シンプルきわまりないドラムソロなのに、めちゃめちゃグルーブがある。ドラムソロと言えば連打と思いこんでいた当時のミュージシャンを(プロアマ、そしてドラマーかどうかを問わず)愕然とさせたものです。
この後のガッドの活躍ぶりと言えばもう書き上げてもきりがないんだけど、とにかく引っ張りだこで「世界一忙しいドラマー」だとか、「スティーブ・ゴッド」だとか言われたりしました。
私もちょっと太鼓叩いたことがあったので、当然憧れました。ガッドに憧れないドラマーなんている?

んで、何で今更ガッドの話を延々としているかというと、来たんですよガッドが。日本に。それも西の果ての九州は熊本に。
信じられますか?熊本にいながらスティーブ・ガッド。
なんでそんなことになったかというと、このブログで以前書いたマリンバの吉田ミカさんが総合プロデュースをつとめる音楽祭「アイランド・マジック」が熊本市と天草で計三日間あって、吉田ミカさんとガッドは知己があったので、今回スペシャルゲストとして登場した、とこういうわけです。
ちなみに他のメンバーはベースがエディ・ゴメス。クラリネットがリチャード・ストルツマン。ゲスト・ボーカルに伊藤君子。アレンジを担当した大島ミチルもMCで登場。おいおいちょっといいのかよこれ、っていうくらい贅沢すぎ。文字通りアイランド・マジックです。
でもやっぱり私の目はあこがれの人、ガッドに釘付け。
普通に8ビート刻んでても何かが全然違うんだもん。もうガッドも御年63歳、そのシンプルさはもうわびさびの境地に達しています。でも今も引っ張りだこっていう理由はよくわかりました。昔、ガッドは主役を食ってしまうとよくいわれましたが、今は違います。実に良く他のメンバーを引き立て、ドレスアップしてやるんですな。なんというのか、そう、父親がおめかしした幼い息子のネクタイを直してやるかのように。ステージでストルツマンの息子がピアノを弾いてたんですが、「ああ彼は今ここでこんな音が欲しいと感じているんだろうな」と思った瞬間、思った通りの(またはそれ以上の)音でスネアやバスが一撃される。もうこれ一度経験したらそのミュージシャン病みつきですよ。これ以上ない音で欲求不満が昇華されるから、演奏者も聴衆もこれ以上ないカタルシスが味わえる。ドラムセッションのエクスタシーとしか表現できない。音と音が絡みあう快感は肉体のそれを遥かに凌駕することだってある。

私この日、いろいろ抱えて、本音はコンサートどころじゃなかったんですが、すべて忘れました。
それでいいのか?って思いますがね。
でも音楽ってそういうもの。
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2008年04月19日

楽しくて平和だったらいいじゃないか

琉球チムドン楽団のライブに行ってきた。
声をかけられるまでその存在を全然知らなかったんだけど、ディアマンテスの元リーダーのボブ石原が始めたユニットらしい。
事前に、「ジャズとポップスと沖縄音楽とチンドンとコミックと演劇と舞踊の融合」って聞いていたので、「大抵そう言うのって外すんだよなあ」などと危惧しながら出かけたのだけど、良い意味で大きく裏切られた。

融合と言われれば確かに融合である。
入れ替えなしの2ステージで、最初のステージは琉球王朝風とチンドン風の融合した衣装で登場。でもよくまとまっていて違和感はない。確かに沖縄民謡がベースだが、あざとさはない。ジャズやロックの間を普通に行き来する、正統的なフュージョンだ。
ボブ石原のMCはコミカルだが、時に荒々しくて少しひやりとさせる。するとすかさずヴォーカル兼舞踊の女性、舞凛(まりん)さんのツッコミというかフォローが入って和ませる。基本的には舞凛が舞台を進行させてボブ石原が絡むという形。
かと思うと、MCの代わりに小芝居が入ったりする。
なかなかこれは楽しいライブではないか、などと思っているうちに1部が終了。
2部までの間に、屋台の沖縄そばとタコライスを食べて泡盛などをなめつつ、(うーんこれは、渋さ知らズに近いのか)と思っていた。
編成は、ボブ石原がヴォーカル・ギター・チンドン太鼓。女性2人が舞踊兼ヴォーカル、ダブルネック三線(初めて見た)の女性、ベース(も女性)、キーボード(も女性、元オリオンビールのキャンペーンガールだって)、ドラム(美青年)、そしてクラリネット・サックス。このクラリネットが良かった。ヨーダという名前で活躍している40くらいの男という以外何の情報も私は持ってないのだけれど、寺島進をさらにシャイにしたような外見でクラリネットを吹き上げるのは、中年男の魅力というか、なかなかセクシーでありました。
でも2部が始まるとすぐに、これは「渋さ知らズ」という路線ではなく、「琉球チムドン楽団」という唯一無二の存在なんだなあと確信することに。

2部はいきなり演劇から。
最初に「今から情話をやる。コメディだ」と宣言されるんだけど、その芝居のタイトルが「沖縄ガマの日本軍の幽霊」。
ガマというのは沖縄の鍾乳洞で、沖縄戦ではそこに避難した兵士や市民が手榴弾を投げ込まれるなどして悲惨な最期を遂げた場所だ。
「いいのかそんなもんギャグでやって」という心配は無用でした。吉本新喜劇系というのか、コメディで色をつけつつ人情話に落とすというスタイルで、20分くらいだったのかな、芝居そのものは大変真剣で、良くできていました(ボブ石原の日本軍兵士の幽霊の衣装は本物の自衛隊の制服だし)。
最後には平和を強烈に訴えるメッセージ舞台なんだけど、そこでボブ石原が一言。「こういうのをやると2割位の客は引く」。
「本当はミュージシャンでこんなのやって許されるのは喜納昌吉だけ」。客は爆笑。うまいよな。

で、メッセージソングを続けるのかと思ったら、あっさりと路線転換。いきなりダンスの始まりです。
座りながら出来る手踊りから始まってうまく客を乗せていく。
気づくと客がほぼ全員踊ってる。いす取りゲームみたいに一列になって会場をぐるぐる踊りながら回ったりして。ちょうど曲が終わったところで偶然私が立ってたのがボブさんの真ん前で、顔をつきあわせるような距離でMCやら次の曲やらを聴くことになってしまった。

会場は10代から60代くらいまでかなり幅広かったのだけど、皆大変に機嫌良く踊り歌い、アンコールは万雷の拍手。
結局1部スタートが7時半、2部終了が11時近いという、これぞライブハウスの醍醐味という時間を味わったのでありました。

CDは3rd「心もよう 夢もよう」が正式には来週出るそうですが、会場で先行発売されていました。過去のと併せて買っちゃいました。
これははまるぞ。

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2008年04月07日

陽水の目の付け所

井上陽水のコンサートに行ってきた。
陽水さんはここ数年毎年ツアーをやっている。ことし還暦なんだが。
私が出かけたのは2008年ツアー最初となる北九州市のコンサート。今回は地元で幕開けだ。
さすがに地元ということで、井上陽水が登場するともうひっきりなしに声が飛ぶ。「陽水!」「よーすいー!」から、女性数人で声を合わせて「井上さーん!」まで。なんだか葛飾の映画館で寅さんの封切りを観てるみたい。

ひとしきり落ち着いたところで、オープニングは「Make-up Shadow」。
ところがこれが思わず?となってしまった。
演奏というより、音あわせというかエンジニアレベルの問題なんだろうけど、ボーカルと演奏の音のバランスがおかしい。歌がよく聞き取れないし、歌そのものの音が割れ気味でなんじゃこれは状態。ホールの前後左右ど真ん中の席だった私ですらこう思ったのだから、ひどい状態と言っていいと思う。
続く「娘がねじれる時」も似たような状況。
さすがにこれが最後まで続いたらちょっとなあと心配していたら、その後は修正されて大変聞きやすくなったけど、サウンドチェックどうしちゃったんだろう。
今回のツアーは、バンドは新メンバーでということなんだけど、スタッフも新しいのかなあ。ツアー初日だからいろいろあるとはいえ、陽水レベルでは考えられないような凡ミス。

そのせいか、陽水のMCも少なめだった。
「地元は関係者がたくさんいるのでやりにくい」と言ったのは、このミスのことを指していたのかもしれない。
あとは「サクラが満開の地元小倉でツアーを始められるのはうれしい」と繰り返すだけで、ほぼ演奏に集中していたステージだった。

それにしても生で聞く陽水の歌唱というのは凄い。つくづくと凄いと思った。
歌声は厚いのに澄み切っていてホールにびりびり響いてくる。キーは昔より多少は下がっているけれど、それを補って余りある声の張り。それも努力してめいっぱい歌っているという様子は少しもなくて、常に感じさせるのは「余裕」。
少し猫背気味に立った井上陽水が歌い出すと、その姿がどんどん大きく見えてくる。サングラスの向こうにいるのは舌なめずりして笑っている悪魔じゃないかと思わせるような迫力がある。
「ワインレッドの心」を「最初から僕の歌だよ」と言わんばかりに「普通に」歌い上げたあと、「リバーサイドホテル」「新しいラプソディー」と続けるともう最初の不調なんて完全にぬぐい去る陽水ワールドの到来。
いやいやいや、還暦を迎えようがこの歌い手は日本の宝。

今回のツアーは初めてのバンドということだったのだけど、以前のツアーをよく知らないので私には比較は出来ない。
ただ、ギター、ドラム(&パーカッション)、ベース、キーボードという最低限のユニットは、シンプルかつゴージャス。
特に目を引いていたのが紅一点のベース。女性のベースと言うだけで結構珍しいのに、いきなりアップライト・ベースで登場。まるでクラシック・コンサートのようなローブドレスで、ジャズベースのように激しく奏でるそのスタイルは当然注目を集めたけれど、演奏は十分に注目に応えるものだった。
終了後、「あのベース誰?」とささやく声がちらほら聞こえてきたけれど、そうだろうなあ、平均年齢50歳くらいのこの日の客層じゃ分からなくて当然。私だってあまりに意外な人物に最初は気づかなかった。

彼女はtokie。この名前でピンときた方は結構なロック好き。
長くニューヨークで活動し、帰国後はRIZE、ajico、LOSALIOSとロックど真ん中(だけど微妙にメジャーじゃない)を渡り歩き、現在はUNKIEでロック・インストというかなりマイナーな活動に挑戦中という、ばりばりのロックな方なのだ。
私はかつてBLANKEY JET CITYに入れあげていた頃があって、その流れでajico、LOSALIOSと聞いていると、かっこいい女性がベースをやっているじゃないですか。モデルみたいな容姿にアップライト・ベース。ずっと気になっていたお方ではあったのだけど、本人を生で見たのは初めて。持って行ったオペラグラスで見てたのは陽水じゃなくてtokie。もうきょうからファン。tokie命。

子どもの頃コントラバスをやっていただけあって、特徴的なのはアップライト・ベースと、エレキベースを弾き分けるその演奏スタイル。
井上陽水のステージでも、途中からエレキベースをぶら下げ(邪魔になるドレスのローブを後ろにひゅんと投げ上げる仕草がまたカッコいいんだこれが)、ギターと絡み合うように弾く。
定番中の定番「傘がない」は、このtokieのアップライトとギター、ドラムが存分に響きあい、オリジナルを十分に尊重しつつもまるでプログレっぽい重厚なロックになってた。

それにしても陽水、シブイところからいいミュージシャンを連れてくるよなあ。
還暦陽水、ロックの王道を進むのか?


  (曲リスト)
  1 Make-up Shadow
  2 娘がねじれる時
  3 POWER DOWN
  4 闇夜の国から
  5 ワインレッドの心
  6 リバーサイドホテル
  7 新しいラプソディー
  8 The STANDARD
  9 5月の別れ
  10 背中まで45分
  11 バレリーナ
  12 嘘つきダイヤモンド
  13 Just Fit
  14 限りない欲望
  15 氷の世界
  16 傘がない
  17 虹のできる訳

  〜アンコール〜
  18 心もよう
  19 少年時代
  20 夢の中へ

       (2008年4月4日北九州市 ウェルシティ小倉)


ラベル:井上陽水 tokie
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2008年01月30日

なんだそういうことだったのか

いい時代になったもので、渡辺香津美のライブがタダで聴けると聞いて出かけてきました。
場所は熊本市現代美術館。
伝説の人形師・松本喜三郎の「生人形展」をやって大成功を収めた上に画壇にケンカふっかけたり(タイトルが「反近代の逆襲」だよ)、セルフポートレートの森村泰昌の展示を大々的にやって画壇にケンカふっかけたり(タイトルが「静聴せよ」だよ)、まあとにかくオーナーの熊本市もここまでやってくれるとは思っていなかったに違いない異様極まる盛り上げぶりを見せてくれた南嶌宏さんが館長を務めている、知る人ぞ知る現代美術館です。
現代美術がちょっとしたブームということですが、東京都現代美術館の長谷川祐子キュレーターをNHKの「仕事の流儀・プロフェッショナル」が取り上げても、こちらを取り上げることはないでしょう。危なすぎ。やけどじゃすまない。
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ラベル:渡辺香津美
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2008年01月27日

パーティ・ナイト

佐野元春のコンサートに行きました。10年ぶりくらいです。
考えてみると、佐野元春のコンサートには80年代、90年代のそれぞれ後半に行っています。期せずしてどちらも佐野元春の大きな転機の時期でした。
佐野元春の最初の転機は84年にリリースされたアルバム「VISITORS」でした。

この前年からニューヨークに拠点を移して活動していた佐野元春は、当時アメリカでも本格化しようとしていたラップに注目。ほかにもファンクなどを大胆に取り入れ、完璧に日本語に消化した上で「VISITORS」を出しました。「コンプリケーション・シェイクダウン」などの収録曲の数々はいまでも十分に先鋭的だと思います。
ところがこれが受けなかった。
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ラベル:佐野元春
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2008年01月20日

マリンバ。この不思議な楽器

吉田ミカさんのマリンバコンサートに行きました。
今や世界的なマリンバ奏者に成長した吉田ミカさんは、これまで地元の天草を拠点にしてきたのですが、今年4月からニューヨークへ移ることになり、今回は節目のコンサート。そしてベースはエディ・ゴメス。
熊本にいながら吉田ミカとエディ・ゴメスのセッション。贅沢ですな。
とはいえ、私はマリンバがメインのコンサートは初めての体験です。
どんな構成か興味津々でした。

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ラベル:吉田ミカ
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2007年12月30日

オールナイト・ニッポンの時代

ずいぶんと久しぶりに帰省しました。
故郷に帰る電車の中で、ipodに貯めこんでおいた「中島みゆきのオールナイトニッポン・お別れの手紙集」を聞きました。

いやあの、そういうのがあるんです。
一から説明しますと、まず中島みゆきさんは1979年から84年までオールナイトニッポンのDJ(当時はパーソナリティっていった)をやってまして、その曲とは180度違う突き抜けた明るさで、「恐怖のカラカラ笑い」などとも呼ばれておりました。とにかく全編爆笑ものだったのですが、番組の最後に読む手紙はしんみりとしたものが多く、印象に残ったものでした。
で、それから四半世紀がたち、私は見つけたのです。
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2007年12月03日

中島みゆき

コンサート行ってきました。鹿児島まで。仕事休んで。


中島みゆきのコンサートって、なぜか遠出になってしまう。

徳島に住んでたときは松山へ(同じ四国なのに片道4時間)、東京の時は浜松へ(これはちょっと別の事情もあったのだけど)。で、今回は新幹線。


今回は弦楽の編成も(バイオリン5+チェロ2)取り入れたあまり例のない大編成。これで「EAST ASIA」や「誕生」をやるんですからたまりません。

あ、「ファイト!」やったときは前列の60がらみのおっさんが目頭そっと押さえてました。

でも何がよかったって「蕎麦屋」を聞けたこと(しかしわからん人にはまったくわからん話だな今回)。高校時代にLPで聞き込んだ曲をまさか四半世紀たってステージで聞けるとは。

今回の曲目は一部、各地で違うみたいで、「蕎麦屋」の代わりに「ホームにて」をやったところもあるようですが、「ホームにて」は前のツアーでもやっているので、個人的には鹿児島大当たりでございます。


アンコールは黒のタンクトップにラメ入りブルージーンズ、ギター姿でみゆきさん登場。オールスタンディングで3連発。

2時間45分。終電が気になりつつも夢心地でありました。


(バンマスの小林信吾、怖すぎだよ)

曲リスト

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ラベル:中島みゆき
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2007年10月12日

JBOY

浜田省吾のコンサートに行きました。

浜省ももう54歳。
とはいえ、
デビュ−30年記念ツアーというためなのか、生来のサービス精神なのか、ステージは豪華絢爛。まるで売り出し中の若手ミュージシャンみたい。
幕間に上映されたミニムービーの出演は、小泉今日子に時任三郎。

熊本は最初に浜田省吾が売れたゆかりの深い土地ということもあって、MCも冴えまくり、24歳のころの浜田省吾を再現した演奏&MC客席笑わせまくりの前半に(設定はまだ前座をつとめていた77年6月の熊本市鶴屋ホール(デパートです)での営業ライブを再現するという趣向)、一転してヒートアップの後半。見応えありました。

クライマックスはなんといってもJ-BOY.
10分近くあった(ような)ライブならではのアレンジに照明にグルーヴ・・・。
うかつにも涙が・・・。

ちなみに席は9列目。
手を伸ばせば届きそうな浜田省吾でした。
ラベル:浜田省吾
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2007年10月08日

若さと未来

Psalmの小さなライブに行きました。
会場は路地裏にある3坪ほどの洋風食堂です。

Psalmというのは玉井夕海さん(vo)とかりんさん(琴)のユニットで、車に琴を積み込んで、現在全国を回っているそうであります。
玉井さんは「千と千尋の神隠し」の声優さんとして知られていますが、俳優、音楽と幅広くこなされる方であります。
初主演映画「もんしぇん」では、1年以上熊本は天草の離島、御所浦島に住み込んで働きながら映画を完成させたタフな方でもあります。

ライブでは、この「もんしぇん」のサントラのイメージよりずいぶんと馴染みやすい曲が多く、2時間近く十分に楽しめました。
なによりかりんさんの25弦の琴がダイナミックで、これから期待です。

終了後お二人とすこしお話をしましたが、きらきらくるくる元気いっぱいで、久しぶりに若さはいいなあなどとおっさんくさくなってしまいました。


ラベル:玉井夕海
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