いやー、やっぱり阿蘇はいいですね。大自然に包まれて。
眼前に広がる大カルデラ。見渡す限りの草原。滾々とわき出る湧水。
うーん、生き返る!
などと言っていたのはまあ、二日目まで。
三日も過ぎる頃になると、
「なんか、こう、あれですよねぇ」と私。
「そうですねえ、あれですねえ」とプロデューサー。
心なしか二人とも元気がない。
「やっぱりあれが恋しいですか」
「夜の街のねぇ、灯りがねぇ…」
「真っ暗ですもんね、ここ」と私。
大自然に洗われたすがすがしい心はどこへ行ったんだか。
まあ、私も「紅灯」なんぞ名乗っていますように、紅灯の巷をさまようことなく生きては行きません。
阿蘇で一仕事終えて、旅館に戻る。
飯もうまいです。阿蘇のあか牛、脂身が少なくこれぞ肉ってな感じで最高です。
お次は温泉。阿蘇の温泉、言うまでもなく最高です。
で、部屋へ。
……。
…………。
ああ、今ここにレモンピールを加えたスコッチのハイボールがあったら。
平たいグラスに注いだシメイ(青)があったら。
レモンも何も入れない、マイヤーズのソーダ割りがあったら。
でも外は真っ暗。漆黒の闇。
カエルがゲロゲロ。
「仕方ない、寝るか」
──消灯。
って、これが正しい田舎暮らしなんでしょうか?
最終日、くだんのプロデューサー氏との会話。
「ねえ、紅灯さん」
「はいはい」
「よくいうでしょ。仕事リタイアしたら第二の人生田舎で暮らしたいって」
「ああー、よく聞きます聞きます。はいはい」
「わかんないですねぇ、ああいうの」
「……。何考えてんですかねぇ、まったく」
街に着いた我々は、脱兎の如く紅灯の巷へ飛び込んでいったのでありました。
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紅灯さんから、
消灯さんへ変更ですね(笑)。