2008年02月20日

匂いとセックス、そして映画

あまり「日本人は○○だけど外国人は××だからね」なんていう単純化しすぎた言い方は好まないのですが、それでもそう言わざるを得ないものの一つに「体臭」があります。

「日本人は体臭を気にするけど、外国人はむしろ好きだよね」。

まあ、日本人の体臭嫌い、体臭を気にする傾向は今更説明するまでもないでしょう。
試しにグーグルで「体臭」を検索してみると、ズラリと並んでます。
「体臭にもう悩まない」「体臭予防」「40代からの体臭対策」「体臭ケアのポイント」……。
とても全部見ることはできませんが、おそらく447万件のヒットのほとんどはこうしたもので、体臭を肯定したものは少なそうだと推測できます。

では外国人の場合はどうか。
同じようにグーグルで検索してみましょう。今度は「体臭 外国人」です。
するとトップにきたのは「わきが相談室」というところで、「『母国にいる時は気にしていなかったけれど、日本に住むようになってから自分の体臭が気になるようになった』という外国人の方が非常に多いのです」と書かれています。
その他も、「外国人の体臭はきつい」という日本人の感想はありますが、当の外国人が気にしているのは上記くらいです。これにしても「母国にいるときは気にしていなかった」わけですから、日本と海外との違いを如実に表していると言えます。

臭いどころか、これがフランスなんかに行けば体臭はかぐわしき香り。
フランスの映画や小説などでは、男が電話で「これから行く。シャワーを浴びずに待ってて」というセリフがちょっとエロチックなシーンにはお決まりです。これは元々ナポレオンが奥方に遠征から帰る際「風呂に入らず待っているように」と言いつけたのが広まったと言われています。
まあ、ナポレオンは匂いフェチだったという説もありますが、何にしろエッチの前には必ずシャワーを使うわが国民性とは対極です。

とまあ、なんでこんなことを言い出したかというと、わかった人はわかったと思いますが、映画「パフューム」を観たせいです。
パトリック・ジュースキントの傑作小説「香水」を、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァが監督しました。原作、監督、いずれもドイツ人です(製作はドイツ・フランス・スペイン合作)。
ドイツ人というのはヘンなことを考えさせたら日本人以上ですな。いまだに世界最悪映画の栄誉をほしいままにしている「ネクロマンティック」のユルグ・ブットゲライトもドイツ人だし。日本アニメ史上最高の怪作「少女椿」を熱狂的に迎えたのもドイツだし。

ま、それはともかく、「香水」を映画化すると聞いた時は少々驚きました。「匂い」なんて映画が一番苦手なジャンルですからね。「ピンク・フラミンゴ」のジョン・ウォーターズが80年代に作った「ポリエステル」(って、タイトルもねえ)では、観客にスクラッチ・カードを配って、映画の指定されたところでカードをこするとすごいイヤなにおいが出てくるなんていうちょっと気の利いたギミックもあったりしましたが。
それくらいしないと(そうか?)、映画ではなかなか匂いが伝わらない。
ただ、同じように直接匂いを表現するわけではない原作の小説であれくらい見事に匂いを表現したわけですから、映画でもいけるんじゃないかとも思うわけです。監督はトム・ティクヴァだし。

ティクヴァの出世作「ラン・ローラ・ラン」を観ていない方のために、ちょっと解説しますと、これはかなり意表を突かれました。私も割と映画を観てる方だと思うんですが、この映画の意表の突き方にはちょっと驚きました。
ストーリーは単純です。若い女が走る。ひたすら走る。それだけ。
一応走るには理由があって、どうにもダメダメな彼氏から電話があり、「タイムリミットまでに大金を工面しないとマフィアに殺される!」ということで、彼女は部屋を飛び出して金策に走る。この場合「金策に走る」というのは本当に走るという意味です。
ベルリンの街をひた走る。エネルギッシュに走る。燃えるような赤毛の女が拳を握りしめて走る。
でも、事故に巻き込まれたりしてリミットを迎え、哀れ彼氏は、というところで彼女が絶叫すると、なぜか物語は最初にリセットされて、再び彼女が走る、走る、走る(ちょっと前に話題になったアニメ「時をかける少女」はこれの影響を受けている気がする)。

というわけなので、この映画80分と短いんですが、でも80分ほとんど彼女が走っているんです。
走る→絶叫する→リセット→走る→絶叫する→リセット→走るの繰り返し。飽きさせないようにというつもりか、走っているシーンを、モノクロにしたり、画面を分割したり、コマ送りにしたりといろんな見せ方をこれでもかというくらいぶちこみます。しまいにはアニメになったりします。さすがにアニメにする必要はあったのかとは思いましたがとにかく80分間あっけにとられたまま終わりました。見終わった印象は爽快です。こっちも一緒に走ったような錯覚も覚えるくらい。
いかにも若手ならではのエネルギーと才気にあふれた一品でした。

この監督ならなんかやってくれるだろうと期待して観たら、やっぱりやってくれました。
「パフューム」はものすごい映画に仕上がってます。
「ものすごい」ってなんだよ、んなもん批評じゃないだろと言われそうですが、だってものすごいとしか言いようがないんだもん。

ものすごい恋愛映画で、ものすごい文芸映画で、ものすごいキワモノ映画です。
一言で言えば究極のバカ映画。
世の諸君、「ハリー・ポッター」なんて観てる場合じゃありません。究極のファンタジーは当面この映画で決まりです。
よくもあの原作をここまで見事に映画に仕立て上げたものです。以前映画「プレステージ」を取り上げた時にも、あのややこしく複雑きわまりない原作小説をさばいた腕を賞賛しましたが、続くものですな。変えるべきところは変え、忠実であるべきところは忠実。

そして「匂い」はどうなったか?

続きます。


posted by 紅灯 at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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