2008年01月09日

2008 出版界の凶兆

当ブログでは、ニュース速報的なものは扱わないつもりなんですが(知るだけならニュースサイト見れば十分。みんなが忘れた頃しつこくほじくりたい)、大変驚いたのと、あまり取り上げられない可能性もあると思いますので、触れておきたいと思います。

「草思社が民事再生法申請。負債総額は22億円あまり」(帝国データバンク)。

うーん、びっくりしましたね。
ノンフィクション系の出版社の中では、ベストセラーと、中身はよいけど数は出そうにもない本をうまい具合にあわせて出し続けている、ちょっと商売上手な出版社だと思ってました。90年代は大手出版社を向こうに回して、飛ぶ鳥の勢いでした。

私の書棚をちょっと見ても、「なぜ美人ばかりが得をするのか」「ファストフードが世界を食いつくす」「食品汚染がヒトを襲う―O157からスーパーサルモネラまで」「エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する」などなどザラザラ出てきます。
みすずや青土社ほど専門性は高くないけれど、一般向けにわかりやすく最先端の科学を解説するのが得意な出版社でした(って過去形はまずい)。また、「間違いだらけの車選び」とか「声に出して読みたい日本語」とかベストセラーを積極的にしかけていくのも上手。
その一方で、骨太な本もきっちり出していく。たとえば「銃・病原菌・鉄」とか、「文明崩壊」とか(あ、同じ著者だった)。

ここに書いた書名って、日曜日の新聞の書評欄を気にするくらいの本好きの方なら「ああ、あれね」って言ってもらえるものばかりだと思います(またネーミングが絶妙なんだよね、草思社って)。
特に草思社が放漫経営だったって話は聞かないし、これで経営に行き詰まるなら、ほかの出版社はどうなる?と心配になる人、相当多いでしょう。

おとといには自費出版大手の「新風舎」も民事再生法の申請に踏み切りました。
草思社と直接類似点はありません。ただ、出版業界にあって「絶えず話題を提供するユニークな存在」だったことは両者に共通しています。
いろんな意味で知恵を絞ってきた二つの出版社が相次いで民事再生法を申請したというのは、単なる偶然に過ぎないなのでしょうか。

出版不況、出版業界の危機が叫ばれてずいぶん経ちます。売り上げ額、年間の出版点数、出版社社員と書店員の給与格差、「文化」の看板に隠れた問題の先送り……危機を裏付ける多くのデータが提出されました。
しかし、世界最古のメディア・本は、その洗練された使い勝手ゆえに、急ピッチで変化を加えていくことは難しい。なにしろ、バッテリーは必要なく、きわめて小型化することが可能で、強度が高く携帯性に優れ、ぱらぱらとめくるだけで検索出来るメモリなんですから。

ただ、特に日本の場合、本の流通形態にはかなり改善の余地があります。しかしその声は、あまりに閉鎖的な流通の圧力に消されがちです。

結局、なかなか良い知恵が出ない、言い出せないまま、ますます事態は袋小路に追い込まれている。
とにかく、両出版社には一日も早く復活して欲しい。これ以上本の選択肢を狭めないで欲しい。
そんなこと強烈に感じさせる2008年の幕開けになってしまいました。


ラベル:草思社
posted by 紅灯 at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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