なんて、およそ私らしくない書き出しです。でも私だって人の子、人並みにクリスマスを祝います。中学校はミッション系に通い、ミサ曲「Gloria」を「in excelsis Deo Gloria」と今でもラテン語で歌えるのですから。
誰も信じてくれませんが、私のipodには今月からクリスマスソングのプレイリストが登場、嫁さんにバカにされつつも朝に夕にクリスマスムードに浸っているのです。まあ、クリスマスが好きというよりも、クリスマスの頃の歳末の慌ただしさが好きなんですが。
で、この「クリスマスソング」のプレイリスト、よく知ってるクリスマスソングを入れるより、「あ、そういえばこんな曲もあったな」てな方がより楽しい。今年の私の一押しは中島みゆきの「Lovers Only」。「心守歌」というアルバムに入ってます。あ、「また中島みゆきの話か」って思いましたね、そこの人。でも、中島みゆきとクリスマスですよ。水と油というか天使と悪魔、豚に真珠。私もかなりひどいこと言ってますか。
中島みゆきのアルバムは、オリジナルだけに限っても35枚もありますが、この中でクリスマスソングは1曲しかありません。一発当てれば四半世紀食えるかもしれない(例・山下達郎)クリスマスソングが400曲中1曲。いかにクリスマスが似合わないか本人が一番自覚している謙虚な例といえましょう。
もう1曲、「クリスマスソングを歌うように」という曲がありますが、これはプロデビュー前の作品で、ライブアルバムにしか収録されていません。
ね、こんな貴重なクリスマスソングはほかにないですよ。聞いてみたいと思いませんか。きっちりとクリスマスソングの形は踏んでます。鈴の音もちゃんと入ってますし、「メリークリスマス」と何十回も連呼してます。メロディも美しい。
今年のイブの夜には是非この曲をイヤフォンで聞きつつ、ケーキ屋さんへ行って「すみません、その苺ショート、いっこください」と泣きながら言ってみましょう。
とまあ、有意義に利用しているわが「クリスマス・プレイリスト」ですが、これは「スマート・プレイリスト」から作りました。
検索機能を使ってitunesの曲の中から一定条件を満たした曲をリスト化するものです。
この場合なら、「曲のタイトル」に「クリスマス」とか「サンタ」とかキーワードを入れてリスト化するとあっという間に数十曲のプレイリストができあがるという、カセットテープに一曲一曲ダビングしていた中学生の頃を思い出すとありがたくて涙が出る仕組みです。
itunesのおかげでwindowsの人たちにもこの「スマートフォルダ」はなじみになりましたが、実はこれ、macの基本システムの一つです。
winでいうところのエクスプローラーにあたるmacのファインダーにはもちろん、標準のメーラー「mail」にも、売り物の「iphoto」にもみーんな欠かすことができません。
ファインダー(エクスプローラー)のスマートフォルダは「スポットライト」とともに機能します。スポットライトは、グーグルデスクトップに近いもので、pcの中のすべてのファイルとフォルダをほぼ瞬時に検索します。
検索の対象はファイル名だけではなく、ファイルの中身、たとえば「中島みゆき」なら、テキストファイルだろうとwordファイルだろうと中島みゆきという言葉が含まれるファイルが検索されます。
ファインダーでスマートフォルダを作り、スポットライトで検索条件を与えてやると、作業に必要なファイルが入ったフォルダが急遽できあがるわけです。
winの方、この説明すぐに頭に入りましたでしょうか。私の説明がわかりづらいのもあるかと思いますが、フォルダの認識というものがwinとmacでは根本的に違うということの一端を感じませんでしょうか。
winの操作というのは、たとえば少し前に終わった仕事だけど、やっぱり要るんだあのファイル、なんてことになると、エクスプローラーでフォルダを探して、片付けてしまったアレはこの辺だと当たりをつけつつ階層を降りていってお目当てのファイルを見つけます。リアルのキャビネットを繰って
書類を探す作業に似ています。
しかしmacの場合では、どんなに書類(ドキュメント)フォルダの中身がとっちらかっていても、検索一発で目の前にそろえてくれます。こっちの方がコンピュータっぽいなあという感じではありますし、実際便利。
今回「leopard」というバージョンにアップしたmac-osの話題の機能の一つに、「クイックルック」というものがあります。これはいちいちファイルのアプリを開かなくてもそのファイルの中を見ることができるというなかなかのすぐれものです。ただ私、これはappleがデスクトップ検索(スポットライト)を強化した故に付加されたおまけではないのかなと思えます。
このスマートフォルダ、そしてスポットライトという方法は、かつてグーグルがネット検索の重要性を衝撃的な形で見せてくれたのと同じように、今後のPC、「パーソナル」コンピュータのあり方に影響を及ぼす可能性があると思うのです。
検索、つまりファイルにラベリングをしてインデックスを作って並べ替えるというのは、コンピュータが本来もっとも得意とするところです。が、どういうわけか現状はそうなっていない。検索しやすいファイル名を考えたり、フォルダをいちいち作って整理しなければならない。拡張子が未だになくならないことなんてその典型でして、そういう意味ではmacだってまだまだ威張れる状況でもないでしょうね。
しかしmacはこの検索が今後どれだけ甘い果実を生み出すのか考え抜いた上で、tiger、そしてleopardと詰めてきた気がします。
ただ、それじゃあmacのみんながフォルダ作るのやめて、検索に頼っているかといえば、おそらくまだそういう状況ではないでしょう。
そこまで検索の精度に信頼を置いていないからです。お目当てのアレが出てこない、というイライラはwinの人だってネット検索などで経験済みのはず。
また検索ワードの限界もあります。
たとえば冒頭の中島みゆきのクリスマスソング「lovers only」。これをいくらクリスマスで検索しても出てきません。これはitunesでの歌詞の検索は可能かという別の問題につながってしまいますが(これはまた別の機会に)、言わんとすることはわかってもらえるのではないでしょうか。
100パーセント完璧な検索はありえないという前提は正しいと思います。人間の知性、クリエイティブな要素というのはまさにそういうところ、検索の陰に潜んでいるものから生まれてくるのだとも思いますし。
しかし、コンピュータが知性の壁に近づいていくというのは、この検索という領域がもっとも近道ではないか、とも思えるのです。