きょう、ニュースでは「社会人のマナー教室」というのをやっていた。
中小企業が合同で、新入社員のマナー教室を開催しているらしい。
それはそれでいいのだが、ちょっと引っかかったことがあった。
講師(人材コンサルタント)が「給料はお客様に払ってもらっていることを自覚して、プロ意識を高めなさい」と話していたのである。
これっておかしくないか?
「プロ意識を高める」ことは大いに結構。
しかし給料は「客に払ってもらっている」のか?
答はノーだ。
もちろん「経営者に払ってもらっている」のでもありません。
「給料とは何か」。これを教えるのが社会人のイロハではないだろうか。
以前、青色発光ダイオードの実用化に成功した中村修二さんを数年間にわたって取材した。テーマは「仕事の対価」である。
「仕事の対価」とは、サラリーマンの場合それは「給料」である。
顧客に対して製品なりサービスなりを提供し、その対価を受け取るのである。そこにあるのは1対1の関係であり、決して「払ってもらっている」ものではない。
当然それは経営者と労働者の関係も同じだ。労働を提供する代わりに対価を受け取るだけのことだ。そこに上も下もない。
ところがこの国ではそれが当たり前に出来ていないフシがある。中村修二さんのケースにそれが端的に表れた。
「給料を払ってやってるんだからありがたく働け」というおかしな考え方に中村さんは異を唱え、貫き通した結果、一審の判決で、600億円を受け取ることが出来ると認定されたのである。
これは日本社会にようやく意識改革をもたらすことになった。
「仕事の対価」を制度として整えるところも増えてきた。
しかしそれでもいまだに「給料を払ってもらってる」なんてことを新入社員に教える「人材のプロ」とやらがいると思うと暗澹たる気分になる。サクラも咲いていい気分なのにね。
いい仕事をして、その対価に見合った報酬を受け取る。それが「プロ意識を高める」というものだろう。
一方で会社のカネと自分のカネの区別もつかない中小企業のオヤジがまだこの国にはウジャウジャいる。
「金は客に払ってもらっているんだ」と教える相手は、新入社員ではなく、経営者の方だろう。
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