担当してくれる編集者Oさんは、毎日出版文化賞の受賞歴もある凄腕編集者なのである。
ただ、読者にとって凄腕ということは大変いいことなのであるけれど、著者にとって凄腕編集者というのはかなり辛い事態が待っているということを予想させることでもあるわけなのである。
普段のOさんはとても温厚な方である(多分)。でも打ち合わせでホテルのカフェの前に座っているOさんは眼光鋭いのである。
「お互い忙しいので30分くらいで済ませましょう」とOさんが言った初回の打ち合わせは、結局1時間半かかったのであった。初回なので、全体のおおざっぱなイメージとか、章立てとか、目次とか、索引を付けるかどうかといったことなのだけれども、なかなか時間がかかるのである。
傍らには私がメールで送っておいた初稿をプリントアウトした束がどかっと置いてある。見ると付箋がびっしりついて、一杯書き込みがしてあるのである。
とても緊張するわけなのであった。
出版関係に足を踏み込むのは今回が初めてで、いろいろ興味深いことがすでにある。
映像の編集作業というのは、1編試写、2編試写、3編試写……などと編集と試写の繰り返して、ものすごく面倒くさいのであるけれども、作り直せば作り直すだけ、これはもう確実に良くなっていくモノなのである。
なのでOさんに「かなり書き直して、いいものにしていきましょう」と話すと、返ってきたのが意外な言葉。
「うーん、ファーストインプレッションが重要なこともかなりありますからね、余り描き直しにこだわる必要はないと思いますよ」
出版文化の違いにとまどいつつも、それほど書き直さなくて済むというお言葉に胸をなで下ろしたのでありました。
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