オバマ新大統領への尋常ならざる期待値はブッシュが消えるということでものすごく底上げされているんだろう。
でもアメリカ国民の皆さんが今どんなにブッシュを嫌おうと勝手だけど、2期8年もの間この男を指導者に選んだのは自分達だという自覚だけは持っておいてほしいと切に思う。世界中が洒落にならないほど迷惑をこうむって、挙げ句命を落とした無辜の民が世界にどれだけいるのか、アメリカ国民は絶対に忘れるべきじゃない。
で、オバマ新大統領の演説。感動的なラストばかり紹介されているけれど、実はかなり冷静に政策を語っている。それも端的に。
「今日問われているのは政府の大きいか小さいかではなく、政府か機能するかどうかだ。適正な賃金の仕事や負担可能な医療費、尊厳ある退職後の生活を手に入れる手助けを政府が出来るかどうかだ。その答が『イエス』の時、我々は前に進む。『ノー』の時、その政策は終了する」
シンプルだ。シンプルだが小泉元首相と決定的に違うのは中味があると言うこと。世界各国で続く「大きな政府・小さな政府」の論争にきっちりと責任ある政治家として答を出している。こんなシンプルな言葉を日本の政治家はなぜ言えないのかな。
安全保障についても同様だ。
「防衛に関し、我々の安全と理想は二者択一であり並列しえないという考え方はまやかしであり、否定する」。
ネオコンや日本のタカ派の主張する「平和主義は理想である」という批判を(そしてブッシュの8年間に世界に広まった考え方を)真正面から斬って捨てた。しかし新大統領は理想主義に走っているわけではなく、冷静に計算している。
「先の世代は(第2次大戦)、我々の力だけでは我々を守ることは出来ないし、その力で思うままに振る舞っていい訳ではないことをわきまえていた。軍事力は思慮深く用いることでその力を増すことを踏まえ、我々の安定は我々の大義の正しさと力強さ、そして謙虚さや自制からもたらされることを知っていた」。
軍事戦略論としても秀逸であり端的だ。
これだけ短い言葉で内容のあることを指し示すのは簡単じゃない。と思っていたら、この演説、オバマ大統領が27歳の側近ライターと二人で書き上げたという。
このライターは「小説家になりたい」と話しているそうだけど、現実を見つめて端的な言葉に纏めあげるこの手腕は政治にこそ向いているんだろうな。
しかし自分より20歳も若いパートナーとこれほど重要な仕事を纏めあげていくオバマ大統領の柔軟さには驚く。
演説の内容よりむしろそのことが今後のオバマ時代を象徴することになりそうだ。
ラベル:バラク・オバマ
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先日はありがとうございました。
しかし、オバマ大統領みたいな柔軟性を、定額給付金に拘って二進も三進も行かなくなってる誰かに求めるのは無理ですね〜