20年近く世話になっているマスターが酒を奢ってくれた。
カウンターに坐って、ぼーっとバーボンロックなどを飲んでいたら、目の前に大振りのショットグラスがぽん、と置かれた。
マスターは何も言わず、笑っている。
軽く香りをかぐと、優しい。
脣を湿らすようにして口に含むと、柔らかく華やかな香りに包まれる。
スコッチだ。それも飛び切りの。
(あててごらん)というようにマスターが見ているので、思い付くままにいくつか挙げてみたが、どれも違った。
「30年物なのにわからんかな?」という一言ではっとした。
「バランタイン?」
そしてカウンターの上に置かれたのは紛うことなきバランタインの30年。
「初めて飲んだよ」
そういうと、マスターは「うまかろ」と言って私の目を見た。
「これから30年、決めたことは続けないかんよ」
そういってまた笑った。
ありがと。
マスターの気持ちに応えられるかどうか自信はないけど、このバランタインの味は忘れない。
ラベル:バランタイン30年
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