2010年02月10日

暴発ツイッター

昨日、ツイッターで2つのびっくりする体験をしました。
1つはなかなか面白い体験で、もう1つは大失敗。
ツイッターをはじめて3ヶ月。何事もはじめて3ヶ月くらいで油断して失敗すると言いますが、まさにその通り。

ではまず面白かったことから。
商売柄すべての新聞に目を通します。朝一番には政経社面の見出しをざっと見て抜かれていないか確認(本当は抜かれていれば明け方に担当者から電話が架かってくるんだけど、まあ念のため)、じっくり読むのは昼飯の時。昨日も昼を食べながら読売新聞の人生相談を見ていたら目が釘付けになりました。あ、読売の人生相談は面白いですよ。質問がエキセントリックなことが多いのもあるけれど、何より回答が気が利いていて。かなり無理難題な質問に「いったいどう答えるんだろう」と思って読むと「おお、こう来たか」ってな感じで、これぞ文章芸の世界。

そして昨日はこの回答が素晴らしかった。「彼氏が二股かけてる。別れたいけど別れられない」という、まあよくある、けれども回答が難しいこの質問に、作家の高橋秀実さんが回答。これが見事なんだなあ。リンク張っておきますが、新聞記事なのでそのうち消えると思うので、引用しておきます。
まず冒頭、「あなたもお考えになったように、その彼とは即刻別れてください。」とバッサリ。
畳みかけるように続きます。「別れることにためらいがあるなら『捨てる』と思ってください。そう、ゴミのように。ゴミというのは収集日が決まっていますから、例えば今週の木曜日と決めたら、その日に捨てる。リサイクルに回すのではなくきっぱりと捨ててしまうのです。」
そして「もしかするとあなたは彼女がいるから彼のことがあきらめられないのかもしれません。その彼女が彼の魅力を保証しており、それゆえ価値があると思っているのではないでしょうか。家電にたとえるなら、もはや不用なのに保証書だけ有効になっているようなもの。有効期限が切れても、また別の彼女をつくることは間違いないので、この際保証書もろとも処分してください。」と見事な比喩。トドメには「ゴミがなくなってもさびしくなんかありません。部屋も心も空きスペースができれば、新しいモノに目が向くはず。どうか恋心を大切にしてください。」。
どうですか、この潔さ、格好良さ。

「これは誰かに読ませたいなあ」と思い、そう、ツイッターがあるじゃんと記事のアドレスを調べ、ツイート。
で、昼飯の残りを片付けてコーヒーでも飲んで、「どうなったかな、誰か見てくれたかな」と見てみると。
RT、RT、RT。ものすごい数のRTがついてるではないですか。
あ、説明しておきますと、RTというのはツイートの返信方法の一種で、通常の返信は1対1が基本(+両者をフォローしている人も見ることができる)なのに対し、RTを付けると、返信をした人をフォローしている人すべてが見ることができます。つまりこの場合、Aさんが私の最初のツイートをRTすると、私をフォローしていないAさんのフォロワーすべてが私のツイートを見ることができるわけです。
15分くらいの間に何十というRTが返ってきました。「いいですなあ」「実にいい」「見事」などというコメントとともに。
もちろんRTせずに読んでいる人はその何十倍、何百倍いますし、フォロワーによっては何千・何万倍ということにもなるわけです。
こんなにRTを返されたのは初めてで、ビックリするとともにこれはなかなか楽しいなあと思ったわけです。

さて、その夜。
深夜に帰宅してPCに向かい、原稿など書きつつツイッターも起動。この最近の癖で原稿のスピードが著しく落ちている気もするのですが、まあ、そこはそこ。特に深夜帯に入ると、最近は漫画家のいしかわじゅんさんなどのツイートが、まるでショウタイムとでも言うべき活況を呈すので、誘惑に勝てません。昔のオールナイトニッポンの投書を出したり読まれたりというのをリアルタイムでやってるような感覚とでも言えば近いでしょうか。ディスプレイの片隅に次々浮かぶいろんな方のツイートをちらちら眺めつつ、原稿書きつつ、さらにDMで某ライターさんなどとやりとりしておりました(実はさらにワンセグのTVの音声も流れてたりする。もうこれは原稿書いてるとは言えない)。

と、新たなツイートが。「……あ、そうか。まあぐりとぐらも犬だし。」
おお、いしかわさんご本人だ。えっ、ぐりとぐらって犬だったの?。
と反応した私は、そのまま反射的にキーボードを叩いたのです。
「え、ネズミだと思ってました。我が人生に大きな間違いが RT @ishikawajun: あ、そうか。まあぐりとぐらも犬だし。」
これが午前1時3分。
そのまま原稿など書いていると、すぐに反応が。いしかわさんではありません。私のツイートをRTした方です。
「えっ!!ネズミじゃないの? RT @koutouwinter: え、ネズミだと思ってました。我が人生に大きな間違いが RT …」
RTがRTを呼ぶ。
「ネズミじゃないの?!RT @*****: えっ!!ネズミじゃないの? RT @koutouwinter: え、ネズミだと思ってました。」
私と言えば、「あ、反応あるなあ、今日の昼みたい」とまだのんびり。
と、ここで当のいしかわさんご本人が登場。
「そうじゃなくて、ぐりとぐらという名前をつけられた2匹の犬が居るって話。RT …」
そうです。私はいしかわさんの前のツイートをよく読んでおらず、ふっと浮かんだツイートだけ見て勘違いしちゃったわけです。
「やばいっ」。とにかく慌てた私は、可能な限りのスピードでこのいしかわさんのツイートをRT。
「大変失礼しました。そそっかしいRT。石川さんにも、瞬く間に広がったRTの皆様にも…RT@ishikawajun」

この時点で午前1時8分。最初の勘違いツイートから5分しか経ってません。
ところが、遅かった。完全に手遅れ。
私をRTした方が非常に多くのフォロワーを抱える方ということも手伝って、その後いしかわさんのもとには山のような問い合わせRTが届いたのでした。もちろんみんな「ぐりとぐらって犬だったの?」一色。
その度にいしかわさんは「途中から話を聞くな−」「前のTLを読め!」とそれまでのTL(タイムライン)の雰囲気を壊さない(マンガ夜話のあのぶっきら優しい)調子で応対され、お詫びのツイートを入れた私にも「面白かったー」「一瞬だったね。Twitterの新たな一面を見たよ。」と優しく声をかけて頂きました。

ツイッターに慣れてきたところに昼間RTで面白い経験して、調子に乗っていた私の責任が第一なのは言うまでもありません。
が、いしかわさんも書かれたように、「これがツイッターなんだなあ」とつくづく感じました。特に普段他愛のないことつぶやいてたりするとそれに慣れてしまって、ツイッターのタイムラインが「日常」化してしまい、時間差なく伝播するネットの怖さをふと忘れてたりする。
今回はいしかわさんの優しさに助けられましたが、私の場合、仕事関係でもツイッター使っていますので2度3度と繰り返すわけにはいきません。暴発騒ぎはいい教訓でした。

そして何より、本当にいしかわじゅんさんにはご迷惑をおかけしました。


ラベル:twitter
posted by 紅灯 at 21:54| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月08日

2割の進化論

ドーキンスの新刊「進化の存在証明」の邦訳が出た。
ドーキンスがこの本を書いた背景には、進化論を信じていないアメリカ人が多いことがある。これはよく知られた話で、たとえば去年発表された調査では60%のアメリカ人が進化論を信じていない。世界は神が作りたもうたまま今の姿があるという、ブッシュのようなキリスト教原理主義者がうじゃうじゃいるわけだ。こうした宗教指導者たちは進化論への攻撃を強めており、公教育で進化論を教えないよう法律を変えたり、児童生徒を組織して進化論を教える教師を吊し上げるよう仕向けている。

こうした宗教的・非科学的非寛容さを徹底して攻撃するドーキンスには本当に頭が下がる。既に世界最高レベルの科学者の地位をほしいままにしているのだから、他の科学者のように「あほの戯言」と無視して安穏と研究生活に没頭することもまったく可能なのに。目の前にある科学的危機を放ってはおけないんだろうな(日本ではなぜか竹内久美子さんとかいうトンデモ本作者が解説本書いたりしている不思議なことになってますが。本人知ったら怒るだろうな)。
それにしても超大国の知的劣化は目を覆うばかりで、医療制度改革への攻撃もそう。「税金を使うな!」「自由を奪うな!」とか言って保険業界の口車に乗せられ踊らされているアメリカの人たちを見るたびに、TVからしか情報を得なくなった人々の末路は恐ろしいとつくづく思う。

さて、アメリカ人の6割が進化論を信じていないのはドーキンスさんにまかせるとして、翻って日本はどうか。
同じデータを見ると、8割の人たちが進化論を信じている。「さすが日本」…なのだろうか。
残りの2割って、進化論を疑ってるの?それってかなり衝撃的な数字じゃないでしょうか。
そりゃアメリカと比べればまともな数字だろうけど、2割だよ。5人に1人が進化論懐疑派だって、これはかなり多く感じるのは私だけでしょうか。

気になるのは、日本の場合、この2割の人たちはどういう主張を持っているのかってこと。アメリカの場合はキリスト教原理主義、イスラムならイスラム教原理主義と、世界各地では宗教と密接にかかわっているわけでありますが、日本の場合はどうなのか。イザナギノミコトとか神話を真剣に信じている人が5人に1人もいるとは思えないしなあ。だいたい神話を詳しく知ってる人がそもそも5人に1人もいないだろうし。
期待を込めて考えれば、「進化論も悪くない考えだけど、もっと正鵠を得た進化の過程が今後解明されるのではないか」という慎重な思想が多いのではとも思える。これなら何も心配はいらないのだけれど。

一番心配なのは、ほら、アレですよ。

「進化論?猿からヒトになっただあ?」
「そんな自虐史観を信じているから日本はダメになったんだ!」

ま、まさか。これじゃないよね。



ラベル:ドーキンス
posted by 紅灯 at 20:01| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月06日

出版1か月

本の刊行からひと月。ちみちみと営業したりしてます。
この手の本は大きな書店じゃないと置く場所ないですからね。値段も結構高めだし。
驚いたのは、amazonの「人権問題」カテゴリーで6位にランキングしたこと(2月6日19:00)。
「人権問題」本というカテがあるのも初めて知りましたが、1位の辛淑玉・野中広務さんをはじめ、塩見鮮一郎さんとか濃厚な方が沢山で恐れ多い。私の上は小林よしのりさんだし。

amazonではすでに2件の書評を頂いていて、その影響もあったのでしょう。ありがたいことです。
書評を頂いたお二人とも直接存じ上げないのですが、「浦辺登」さんという方はネット書評では知られた方だそうです。
「まだこの国のマスコミは骨の髄から腐ってはいないことを実感」という言葉を頂戴しました。「表には出てこないかもしれないが、いろいろと政治的にも圧力があったのではと思える」ともありまして、これについては、ハイ、ありました。とお答えしておきます(苦笑)。ちなみにこの方にはBK1にも書評を頂いているのですが、こちらはまた違う文章でありまして本当に頭が下がります。

もう一人の方には「過ちを素直に認め、現状を正しく認識することから問題の解決が始まるという教訓を忘れてはならない。それは官僚組織だけでなく、多くの民間企業にもあてはまる。そして中国やインドなど高度経済成長期を迎えている新興国の人たちにもこの本で書かれている内容が伝わってほしい」と書いて頂いて、まさに本を通して訴えたかったことの一つです。ありがとうございます。

また1月26日付の「熊本日日新聞」朝刊に2段の囲み記事で載りました。本と私の顔写真付き。リンク張りましたが会員登録制なので引用しておきます。
「NHK記者が「なぜ水俣病は解決できないのか」を出版
 1991年のNHK入局以来、水俣病問題の取材を続ける東島大記者(43)=北九州放送局=が「なぜ水俣病は解決できないのか」=写真=を弦書房(福岡市)から出版した。題名の問いに対する関係者の答えが詰まっている。
 水俣病の公式確認から50年を迎えた2006年、東島記者ら当時の熊本放送局のチームが制作し、50回にわたって放映したインタビュー番組「水俣病証言録」が土台。これに東島記者の追加取材分を補足、再構成した。
 登場するのは被害者や支援者、研究者、原因企業チッソ関係者ら47人。水俣病問題にかかわる代表的存在の人たちばかりで東島記者は「詳しくない人が水俣病問題を知り、何が問題なのか理解してもらえる」と言う。巻末には1906年から09年9月までの主要な出来事を収録。単なる年表に終わらず、ボリュームのある解説が加えてあり、資料性も高い。販売価格は2205円。(石貫謹也)」
石貫さん、ありがとうございます。

それから、明日の長崎新聞の書評欄に紹介記事が載るそうです。長崎の方、ご覧下さいませ。


ラベル:水俣病
posted by 紅灯 at 21:14| 水俣病 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする